福井中学生殺害事件 前川彰司さんの無罪が確定 検察上告せず

1986年3月、福井市豊岡の団地で、卒業式を終えたばかりの中学3年の女子生徒が自宅で刃物で刺されるなどして殺害されているのが見つかりました。
物的な証拠が乏しく捜査が難航する中、事件の1年後に当時21歳だった前川彰司さん(60)が殺人の疑いで逮捕されました。
前川さんは一貫して無実を訴え、裁判では「事件が起きた夜に、服に血が付いた前川さんを見た」などとする目撃証言の信用性が最大の争点になりました。
1審の福井地方裁判所は1990年、関係者の証言の内容がたびたび変わっていることなどを理由に「信用できない」として無罪を言い渡しました。
しかし、2審の名古屋高等裁判所金沢支部は、1995年に、「証言は大筋で一致していて信用できる」と判断して、無罪を取り消して懲役7年を言い渡し、その後、最高裁判所で有罪が確定しました。
前川さんは、服役を終えた後の2004年に名古屋高裁金沢支部に再審=裁判のやり直しを求めました。
裁判所は2011年、事件後に前川さんが乗ったとされる車の中から血液が検出されなかったことなどから、「証言の信用性には疑問がある」と指摘し、再審を認める決定を出します。
これに対して検察が異議を申し立て、名古屋高裁の本庁で改めて審理した結果、2013年に「証言は信用できる」と金沢支部とは逆の判断をして、再審を認めた決定を取り消しました。
その後、最高裁判所は前川さんの特別抗告を退け、再審を認めない判断が確定しました。
2022年10月、前川さんの弁護団は名古屋高裁金沢支部に2回目の再審請求を行い、審理では再び、目撃証言の信用性が最大の争点となりました。
裁判所との3者協議の中で弁護団は検察に対し、証拠の一覧表などを開示するよう求めました。
検察は当初、開示を拒否し、裁判所が再検討を促した結果、一覧表の開示には応じなかったものの、当時の捜査報告書など、あわせて287点の証拠を新たに開示しました。
その一つが、1989年にもとの裁判の途中で警察が作成した捜査報告書です。
有罪の決め手とされた目撃証言をした前川さんの知人が、「事件当日に見た」と話していたテレビ番組のシーンについて、テレビ局に照会した結果がまとめられていました。
該当するシーンの放送日は事件の1週間後で、事件当日には放送されていないことが明らかになったのです。
去年10月、名古屋高裁金沢支部はこの捜査報告書について「証言の信用性評価に重大な疑問を生じさせるもので、確定判決が有罪と認定した根拠を揺るがすものだ」と指摘し、再審を認める決定を出しました。
この決定に対し検察は異議申し立てをせず、前川さんが最初に再審を求めてから20年を経て、やり直しの裁判が開かれることになりました。
ことし3月、名古屋高裁金沢支部で再審の初公判が開かれ、検察は改めて有罪を主張しましたが、新たな証拠は提出せず、1日ですべての審理が終わりました。
裁判所は先月18日の判決で、当時、有罪の決め手とされた知人らの目撃証言について「捜査に行き詰まった捜査機関が誘導などの不当な働きかけを行い、関係者がそれに迎合した証言をした結果、形成された疑いが払拭できず、いずれも信用できない」などとして、前川さんに無罪を言い渡しました。
判決のあと裁判長は「39年もの間、大変ご苦労をおかけし、申し訳なく思っています」と謝罪しました。
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